2010年 07月 11日
2010/07/11

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自意識過剰



今の僕にふさわしい言葉かもしれない。前回の記事を書き終えた僕は明らかに浮かれていた。前回の記事の末尾に書いたとおり、今回の記事はオリックス対日本ハム戦を見に行ったことを書くつもりだった。

「オリックス対日本ハム」という対戦カードが地味であることは自分でも自覚していた。それでも僕は、「ここのブログの読者さんはきっと僕の書くオリックス対日本ハム戦観戦記に興味を持ってくれてるんだろうな」なんて信じていた。具体的には、「秋葉さん、オリックス対日本ハムの観戦記楽しみにしてます」だとか、「オリックス対日本ハム戦の続きが早く読みたいので、毎日愛の波動砲チェックします。」なんてコメントをいただいたりするんだろうなと思っていた。

思い上がりだった。前回の記事に寄せられたコメントを読み返してみたら、「モンキーマジックと聞いて飛んできました」というとりあえず感の漂うコメント。「私は女性の尻を追いかけるのが好きです」という本文と全く関係のないコメント。「オリックス対日本ハムには興味がありません」という直球勝負のコメント。「ダサくてひとりぼっちの秋葉さん」とことさらコメント欄で言わなくてもいいことをわざわざ強調して公衆の面前で僕を罵倒するコメント。挙げ句の果てには、「その試合、○対○で○○が勝ったんだよね」と僕が記事にする前に次記事のネタバレをしてしまうものまであった。僕がそのネタバレコメントをこの記事を書き終えるまで未承認にしておいたのは言うまでもない。

そんなコメントの中でも、僕にとって、ひとつだけ希望を感じるコメントがあった。「秋葉さんの観戦記なら興味津々・・・」。はるれいさんから頂いたコメントだった。正直、彼もオリックス対日本ハムには興味がなかったかもしれない。実際僕も、ブログのネタ作りに見に行っただけでオリックス対日本ハムなんて全然興味がなかった。そのコメントは社交辞令だったのかもしれない。それでも僕は嬉しかった。一人でも僕のブログを楽しみに読んでくれる人がいる限り、僕はこのブログを書き続けないといけないと思った。



「君が笑ってくれるなら、僕は悪にでもなる」



僕は、中島みゆきの「空と君の間に」を近所にも聞こえるぐらいの大声で歌いながら自分でも全然興味が無いのに見に行ったオリックス対日本ハムの観戦記を書くことにした。


6月20日。天気くもり。京セラドーム大阪に到着したのは2時過ぎで、試合は既にはじまっている時間だった。一番安い外野自由席(1700円)のチケットを買ってドームに入場する。野球観戦は久しぶりだ。外野の空いている席に腰掛けると、遠くにオリックスと日本ハムの選手達が見える。パリーグの中でも現在下位同士のチームで地味な対戦カードとはいえ、やはりそこは華やかなプロ野球の世界で高校野球なんかとは選手の動きが違う。プロ野球の一軍メンバーとしてプレーすることは全国の球児たちの目標だ。「そういえば、僕もプロ野球選手になろうと思ってたっけ…」。思えばあの白球を追いかけていた日々が僕にとって一番輝いていた時期なのかもしれない。僕は目の前のプロ野球の試合を見ながら昔のことを思い出していた。

これまでの日記にも書いたことがあったが、僕は近所でも評判の野球少年だった。あのころは野球のことだけ考えていればよかった。最近は、映画ルーキーズみたいに長髪の野球部員も増えてきていると思うけれども、僕が野球をしていた当時なんていうのは決まって野球部といえば丸坊主というのが暗黙のルールで、僕のいた学校も例外ではなかった。丸坊主頭の僕についたあだ名は「マリモ」。授業中に後ろの席の島袋くんに「マリモ!マリモ!」と30cmものさしで頭をバシバシ叩かれたことをよく覚えている。

僕は「マリモ」と言われようが、30cmものさしで頭を叩かれようが構わなかった。あのころは、白球を追っていれさえすれば幸せだった。自分の才能を疑いもしなかった。僕は野球部の中で一番肩が強くて、遠投なんてすれば他の誰よりも遠くにボールを投げることができた。ポジションはピッチャーだったけれども、チーム事情によっては内野でも外野でも、キャッチャー以外の守備位置ならどこでも無難にこなせるユーティリティープレーヤーだった。大げさにいえば、どこを守っても本職の守備位置についている同級生よりも上手かったかもしれない。

もちろん、僕は才能だけで野球をやっていた訳ではなくて努力もした。必死に練習した。他の部員が80球投げ込みをしたら僕は150球投げ込みをしたし、他の部員の誰よりもバットを多く振って、誰よりも大きな声を出して練習に励んだ。みんなが嫌がる冬場の持久走なんかもみんなが息を上げる中、僕は他の部員たちを周回遅れにするぐらいトップをきって走った。全部、顧問の先生が練習を見ている時だけの話だ。

ある冬のことだった。顧問の先生が職員会議でその日は野球部の練習を見ることができなかった。こういう日を僕はラッキーデーと呼んでいて、練習は手抜きしたい放題だった。その日の僕もいつもは他の部員達を周回遅れにする持久走をチームで一番デブの岡本くんと一緒に最下位でフィニッシュした。持久走を終えて、さぁ片付けをして帰ろうかというその時だった。顧問の先生が職員会議を終えてグランドに戻ってきた。部員達が顧問の前に整列して、「こんちわー」と大きな声で挨拶する。しばらくの沈黙の後、顧問は部員達一人一人の目を見据えて恐ろしいことを言った。



「今日、俺隠れてお前らの練習全部見せてもらったから」



僕の血の気がみるみる引いていった。今日の練習の総てを顧問の先生は全部見ていたのだ。運悪く、この日の僕はトスバッティングで利き手と違う左打席で打ってみたり、ピッチング練習では巨人の外国人投手・ガルベスのモノマネをしてみたり、さっきも書いたとおり持久走で岡本くんとダベりながら思いっきり手抜きして最下位でゴールしていたのだ。岡本くんの持久走はいつも最下位だからまだ言い訳が立つ。明らかにヤバイのは僕だった。しばらくの沈黙の後、顧問がまた重い口を開いた。



「今日、一日見せてもらって、誰が普段真面目にやって、誰が手を抜いてるのかよく分かった。とくに、秋葉・・お前がいちばんひどかった。」



全部員の前での名指し攻撃だった。僕はなんとかこの修羅場を逃れなければならないと頭を回転させ、とっさに「きょっ今日は…お腹が痛かったんです」とうつむいて肩を振るわせながら言い訳した。顧問の先生は、それ以上なにも言わなかった。うつむきながら僕は他の部員達みんなが「ざまぁwwwwwwww」という感じで笑いをこらえているのがよくわかった。後から思い返してみると最低の言い訳だった。お腹が痛い奴が「ガルベスの投球フォームのモノマネ」を練習中にするはずはなかった。今思い出してみても、人生のベストテンに入るぐらいの最低の出来事だった。それからしばらく僕は、「ガルベスのハライタ事件」と他の部員たちに馬鹿にされたことは言うまでもない。


話が逸れた。野球部時代のことを思い出して辛くなった僕は、なんとか気持ちを明るく保とうと野球観戦に集中することにした。何より僕は、楽しい思い出をつくるためにこの京セラドーム大阪に来たのだ。辛かった昔のことなんかを思い出してみても仕方なかった。「お前、一人で野球見に来て何が楽しい思い出なの?」と思った読者さんもいるかもしれない。でも、スポーツ観戦というのは一人で来ていてもそれなりに楽しめる要素があった。それは他人との感動の共有だ。

野球でも、サッカーでもスタジアムにスポーツ観戦をしに来ている人というのは大体ある同じ目的を持ってスタジアムに来ている。それは、「自分の好きなチームに勝って欲しい」ということだ。そういう目的という点では、自分も周りに座っている人も意思を同じくしている。僕も一人で野球を見に来たことは何度もあるけれども、自分の応援しているチームに得点が入った時なんかは、見知らぬ隣の人とハイタッチしたり、サヨナラ勝ちなんかを見届けた日には、見知らぬ隣の人と手を取って飛び跳ねて喜んだりしたこともこれまでの人生の中で何度もあった。

今日はどんな感動の共有が待ってるのかな…?周りに僕と気の合いそうな人はいるだろうか?そんなことを思いながら、僕は自分の周りの席であわよくばハイタッチでもできそうな人を探すことにした。

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誰もいなかった。写真みたら分かると思うけどガラガラ。というか、オリックス対日本ハムのわりにはこの日はそれなりにお客さんが入っていたと思うのだけれど、僕は自分から人がいなさそうな席を選んでいた。僕から少し離れた席で、亀田四郎に似たおっさんが「カブレラ~ カブレラ~」とダミ声で絶叫応援していたけど、正直あんまり友達になりたくなかった。感動の共有はできなかった。あんなダミ声で応援してる人って中川家の礼二がネタでやっているだけだと思っていたけれども、本当にそういう人がいた。


感動の共有を諦めた僕はもう家に帰ろうかと思った。でも、このまま帰ってしまうと本当にブログに書くことも何もなくなってしまう。思い悩んだ僕は、野球観戦とは別の楽しみを見つけることにした。それは、球場にしかない食べ物を探すことだった。

正直言って僕は、あまり食べ物というものに執着しない人間だった。ここを読んでいる人の中にもそういう人はいるはずだ。食べ物に関するエピソードとして、ここの読者の方は信じてくれないかもしれないけど、しばらく前に僕はある女の子と某所を散策したことがあった。女性と2人でどこかへ行くなんて経験の少ない僕はたどたどしい会話ばかりしていた。何を話してよいかよく分からなかったのだけれど、僕はその方に「お腹すいてないですか?」なんてことを何度か聞いたのを覚えている。その時のその方の回答は「私、あんまり食べ物に執着しないというか、人間の三大欲求の中で食欲が一番少ないかもしれないー」なんてことを言っていた。それを聞いた僕は、「人間の三大欲求っていうのはつまり、食欲と睡眠欲と性欲だよね?あなたは今、その中で食欲が一番少ないと言った。つまり、食欲より性欲のほうが旺盛という訳なんですね!このドスケベが!」と周りの通行人が振り向くぐらい大きな声で突っ込んでやった!!!!!!
りする訳ないだろ。秋葉さんこう見えてリアルでは紳士。


話がそれてしまったけれども、僕もあまり食欲が無い子というか、食べられればなんでもいいという感じだった。けれども、今回の場合は別で、何か珍しいものを見つけて食べないと何のブログネタも見つからず家に帰ってしまうことになる。何とかブログネタを見つけようと悩んだ僕は京セラドームの売店を歩き回って、以下のようなものを見つけた。

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たこ焼きロール 500円

別に何も珍しくないと言われるかもしれないけれど、これぐらいしか目新しい物が見つからなかった。読者の皆さんには、このたこ焼きロールがどういうものか写真でイメージできるだろうか。念のために説明すると、6個か8個入りのたこ焼きを卵でくるんであるという代物。肝心のお味のほうはどうだったかというと、あまり思い出したくない。売店前のテーブルで「ブログ用に・・・」とデジタル一眼でたこ焼きロールを一人撮っている僕を怪訝そうな目で見ていた家族連れの冷たい視線。僕は一生忘れないと思う。撮影を終えた後に食べたたこ焼きロールは涙の味がした。


たこ焼きロールを食べ終えたところで、何か球場のほうが騒がしくなってきた。ここまでこのブログで試合の内容に触れたことは無かったけれども、この日のオリックス対日本ハムは7回途中まで1対3というどちらに転ぶかわからない接戦でなかなか面白い展開だった。僕がたこ焼きロールを食べ終えた時は8回表ぐらいで、日本ハムがチャンスを迎えていた。僕は盛り上がる日本ハムの応援席を覗いてみようとレフト外野自由席に移動する。
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何か、みんな立ち上がってジャンプして応援している。レフト外野席の小さな一角とはいえ結構な盛り上がりだ。このジャンプの応援は僕もテレビで見たことがある。
日本ハムファンの間では名物の「稲葉ジャンプ」というやつだ。稲葉ジャンプというものがどういうものかというと、日本ハムの看板打者、稲葉選手が打席に入る時に観客が音楽にあわせて一斉にジャンプするという応援だ。ここは京セラドーム大阪で日本ハムにとっては敵地になるのだけれど、日本ハムの本拠地の札幌ドームでは日本ハムファンの大多数がこの「稲葉ジャンプ」をするために、そのジャンプによる球場の揺れは深度3~深度4に相当するぐらいの揺れを感じるほどの名物応援だ。この稲葉ジャンプの直後、日本ハムが満塁ホームラン2本などで11対1と大幅にリードする展開となり、大量得点で日本ハムの応援席は大盛り上がりだった。
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「僕も日本ハムファンならこの輪に入れたのに…」そんなことを思いながら、僕はもう残り僅かとなった試合を見ていた。そうしているうちに、僕はどうしてもこの盛り上がっている輪に入りたくなった。もう「ニワカファン」と言われてもいいから、僕も一回だけ稲葉ジャンプに混じって球場の他の観客と感動の共有をしてみたかった。それに、打席順を考えてみると、あと一回日本ハムの攻撃は残っていて間違いなく稲葉選手に打順が廻ってくる。僕は9回表の日本ハムの攻撃がはじまるまで日本ハムの応援席に留まることにした。

8回裏のオリックスの攻撃が終わり、次は日本ハムの攻撃だ。僕は稲葉ジャンプの準備をするためにさりげなく屈伸運動をした。誰よりも高くジャンプするために・・・。僕の存在を日本ハムファンに認めてもらうために・・・。ひょっとしたら、僕の稲葉ジャンプを見た日本ハムファンの人が「兄ちゃん、いい稲葉ジャンプだな」とか「このあと、応援団で打ち上げするからキミも参加しないか?」なんて僕に声をかけてくることがあるかもしれない。これこそ僕が求めていた感動の共有なのだ。オリックスの投手の投球練習が終わり、日本ハムの選手がバッターボックスに入る。さぁ、場内アナウンスが「3番~指名打者稲葉」とコールしたら稲葉ジャンプのはじまりだ!胸を高鳴らせている僕に場内アナウンスが聞こえる。




「バッター稲葉に代りまして、代打鵜久森」








誰だよ鵜久森って!!!!!!!!!





うん。これこそがリア充な日記だね!(絶対違う)。
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by d-akb | 2010-07-11 08:39
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